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本のかたち

形のない本

ブックデザイナー    辻村 益朗
(2010年9月発行 会報第1号より)

 1997年秋に、ロンドンのセント・パンクラスにできた「新・大英図書館」は、18世紀からの歴史があり、世界有数の写本や刊本のほか、地図や楽譜などの膨大なコレクションで著名です。開館の翌年には、所蔵品の一部を展示した専用ギャラリーも開設されたので、そのころ訪れたことがありました。

 そこには、特別の価値をもった蔵書とともに、イギリスの至宝『リンディスファーン福音書』(7世紀末のケルト装飾写本で彩飾が素晴らしい)も展示されていました。そしてこの貴重書は、別に設けられたディスプレー装置で、ほかのフォリオも見ることができました。それはキーボード操作によるものではなく、ディスプレー上で、手を右から左へと動かすと、画面は書物の一葉をめくるような動きをみせ、次々と画像が見られるものでした。その折には、進んだ閲覧方法に感心したものです。

 あれから、10数年が経過しただけなのですが、日本でもごく普通の本をとりまく環境――出版の形態も、急激に変化してきたようです。「電子書籍」は本文タッチのページ移動が一般的になり、従来型書籍とは別の、読書端末で読む「形のない本」の普及が加速してきました。

 さて、このコラムは、「本のかたち」に関わる内容で、さまざまな観点から書いてきました。連載といっても、次回までの空きがやヽ長かったために、テーマ別、系統的ではなく、時代的にも前後した記述でした。しかしこの先は、より専門的、あるいは趣味的な分野に入り筆者の手に余ります。形のない本にふれたこのあたりで、連載最終回といたします。長い間のご愛読を感謝します。

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